トラウマ小説 ◆4◆ 痩せた体

 あの合宿の直後、ぼくは家でもあまり食べられなくなり、ガリガリに痩せてしまった。
 夏休みを終えた学校では、「どうしたの?」と、心配してくれる友達がいる。その友達の目はわずかに瞳孔が開いていて、ぼくの体に向けられている。
「いや、どうもしないよ」
 ぼくはだれにもバレたくなかったんだ。合宿で吐き過ぎたことは大恥だったし、バレたら絶対にきらわれてしまうと思ったから。
 でも学校には当然、野球のチームメイトがいる。いつもとうとつに、「只生がな、合宿で――」と、ぼくの周りの人に、意地悪なちょっかいをしてきて、そのたんびに、「やめろ!」と必死で追い返さなければならなかった。すると、
「なにかあったの?」
 当然、友達は不思議がる。
「なんでもないよ」
 そのうち、自然とぼくを追いつめる声は消えていった。たぶんほかのだれか優しいチームメイトが、『もうやめようぜ』と陰で助けてくれたんだろう。