トラウマ小説 ◆5◆ 給食

 学校には当然だけど、給食の時間がある。朝からなにも食べていないからはらぺこなのに、ウッと吐き気がするという、分裂状態。ぼく自身わけがわからない。
 やがてとことん悩み抜いて、こう結論づけた。
 
『給食でさえ食べられなかったら、死ぬな』 
 
 これはつまり、拒食で死んでしまうということ。全力でさけなければならない。ぼくから迷いを消し去ったのは、それこそキンタイで培われた根性だった。負けん気と根性が、ぼくをがむしゃらにつき動かしたのだ。
 
 それからというもの、ぼくはクラスでだれよりも一番先に給食を食べ終えるようになった。足りなくておかわりも毎回した。どこかしらで意地が働いていたのかもしれないな。
 
 でも、食べられるのだけど、実は内心では不安だらけ。食べてる最中にいつ襲ってくるかもわからない吐き気という魔物が、頭に巣くう。その不安のいっさいを取っぱらうように、いつしかバケモノのように、だれとも会話をせずにものすごい勢いで給食をたいらげるようになった。
 はたから見ればすごく滑稽な姿だったろうけど、もはや見た目なんか気にしちゃいられない。本当に恥ずべきことは、残すことと、吐いてしまうことだから。もう、バケモノでもかまわない。