トラウマ小説 ◆7◆ 空腹にたえて

 毎週日曜日。キンタイの練習のために朝早く起きる。一週間に一度やらないとダメな、もはや儀式。そしてやっぱり儀式の前は、なにも口に入らない。
 まずはじめにやるのが、学年をごちゃ混ぜにした、チーム対抗リレー。ぼくはいっつも興奮と緊張でのぞんでいたから、はらぺこでいないと、まず吐いてしまうんだ。
 そのあとはもちろん、なにも食べないで4時間、みっちりと練習を受ける。
 
 キンターイ……ファイッ「オウ」ファイッ「オウ」ファイッ「オウ」
 大きな公園をぐるりと走り、休む間もなく、ストレッチをしごかれながらたっぷりと。骨が折れる。練習の時間はまだたっぷりと残されている。
 練習場である学校に戻ると、空腹が体を強烈におそう。それでもきびしい練習がはじまると、レギュラーを外されたくはないという意地が働き、動く。 
 刺すようなお腹の痛みで、しだいにむしばまれていく体。それでも無理やり、華麗にプレーしてみせる。レギュラーだから周りに認められていないとダメだ。野球のプレー自体は、飛び跳ねるほど楽しいものだ。なにか食べたい欲求は、うちに帰るまでわすれたフリ。でも体は正直なもので、口の中では、だ液が絶えずビチャビチャと遊びまわっている。